緑に輝くアブラ臭の温泉でほっとひと休み - 巣郷温泉 峠の湯

巣郷温泉 峠の湯
岩手県西和賀町の湯田温泉峡を構成する温泉地のうち、巣郷温泉は秋田との県境付近にあって、アブラ香る温泉だという情報をかつて目にしたことがある。それ以来なんとなく頭の隅に巣郷温泉が引っかかっていた。

このたび一関から北上エリアを周遊するにあたり、ちょっと遠回りをして巣郷温泉にも訪れることにした。中でも一人旅の身で気兼ねなく利用させてもらえそうな日帰り施設「峠の湯」に決定。

決して広くはない、内湯浴槽ひとつのみのシンプルなお風呂だが、緑色&アブラ臭という個性はしっかり出ていた。なるほどこれが巣郷温泉かあ。独占でゆっくりさせてもらっちゃって、すいませんね。

巣郷温泉「峠の湯」への道

途中で湯田ダムと錦秋湖を見学

旅の2日目。夏油温泉・元湯夏油をチェックアウトして山道を下っていった。5km以上続く狭隘道路は緊張の連続。秘湯という別世界から俗世に戻るための通過儀礼みたいなもんだ。自分はまだ難なく運転できるレベルではなかったのでね…ひぃぃぃ。

どうにか無事に片側1車線級の道路まで復帰し、県道37号→国道107号を和賀川沿いに西進する。川の両側に山が迫って渓谷ぽい景色になってる場所もあるね。途中休憩を兼ねて立ち寄ったのが湯田ダム。この形はアーチ式ですな。なかなかの大きさだ。
湯田ダム
ダムによってできた錦秋湖は水位がだいぶ低いようで、湖というよりは広めの川のようだった。
錦秋湖
3年前に一関→北上回りで湯沢へ移動した時は高速道路の錦秋湖SAで休憩したんだけど、余裕がなくて錦秋湖を見ることはできなかったから、今回見られただけでも良しとしよう。

バリケードの支柱に使われている絵が「なんだこれ?」と思ったら、わんこそばじゃないか。あー、岩手だけにね。
わんこそば柄のバリケード

本当に県境近くだった巣郷温泉

湯田ダムには「きんしゅうこものしり館」なる資料館もあった。ダムについての紹介だけでなく、なぜか蝶や甲虫も展示されていた。飲食やおみやげなど一般の観光面をカバーするような施設ではない。

そういう目的のためには近くの「道の駅錦秋湖」を利用しよう。ただし道の駅からは錦秋湖が見えなかった。現在利用できないという展望台へ行けるようになれば見えるのだろうか。

さて、道の駅を出てさらにR107を走っていくと、“もう秋田県に入っちゃうよ”というぎりぎり手前に峠の湯が現れた。周辺には静山荘などの巣郷温泉の旅館群も見える。また峠の湯の道路を挟んだ向かいには「でめ金食堂」があった。
でめ金食堂
ここで食事をすると無料で温泉風呂を利用させてもらえて、しかも大変結構な泉質だという口コミだったが、一身上の都合により休業中との由。


ローカル色あふれる峠の湯

巣郷温泉のアブラ臭

では峠の湯へいざ入館。ちょうど1組の客が出てくるところとすれ違った。券売機で入浴券を買おうとしたら小銭がなくてフロントで直接支払った。400円。

それほど大きな施設ではない。フロントのすぐそばに男湯への入口がある。脱衣所には鍵付きのロッカーが備えてあるから旅行者目線だとありがたい。分析書によれば泉質は「ナトリウム-塩化物硫酸塩泉、低張性、アルカリ性、高温泉」とのこと。盛夏には加水することがある。加温は記載なし(たぶんしてない)、循環あり、消毒あり。湧出時70℃を超える源泉を42℃にして提供している。

浴室に入ったとたん、むわーっとアブラ臭が漂ってきた。おう、これが噂の巣郷温泉か。なるほどね。洗い場は4名分。奥に位置する浴槽は向かい合わせになれるほどの奥行きがなくて、横並びに4名、詰めて5名までのサイズ。右奥の湯口からはお湯が出ていなかった。溜め湯なのか、底から投入する仕掛けがあるのか。

浴室とお湯がお揃いのカラーリング

浴槽を満たすお湯は薄い緑色で濁りはない。ちなみに浴室の壁がツートンカラーになっていて、下半分が白いタイル、上半分と天井がお湯の色に合わせたかのような淡緑色で塗られていた。やっぱり狙ったんですかね。

浸かってみたところ適温だった。熱すぎないので入りやすく、しばらくお湯の中に身を沈めていることができる。熱気ですぐに体内がヒートアップして出たくなるような温度ではない。うまく調整してくれているようだ。夏でもこれならいいですね。

泡付きはなし。湯の花はたまに白い粒が漂っているような気がする程度。匂いを嗅いでも鼻が慣れてしまったのか、アブラ臭は微かで強烈に襲ってくることはなかった。消毒ありでも塩素臭は感知せず。色と匂いの特徴で最近入った温泉の記憶と照合すると、稚内の宗谷パレスに似ているような気がした。あちらほどのヌルヌルはないけれど。

最初から最後まで独占で

大きめの窓の大部分がすりガラス状なので、風呂に入りながら外の景色を見ることはできないし、逆に外から中を覗かれることもない。もし外が見えるとしたら、おそらく当館の裏手の田んぼや草地の風景が広がっているものと思われる。退館後に裏手の写真を撮ってみたのがこちら。まあこんな感じのが見えるはず。
裏手の景色
滞在中は誰も来なくてずっと独占だった。おかげで行動面でも心理面でもマイペースを貫いてゆっくりすることができた。熱すぎないとはいえ、体温ゾーンのぬる湯ではないから、さすがに何時間でもというわけにはいかない。次の予定もあるし、適当な頃合でタイムアップ。

うーん、温泉の効果か、ずいぶんさっぱりしたなあ。こうしてアブラ臭を身にまといながら峠の湯を後にした。