温泉旅館の夕方の大浴場における人口密度の見積り

温泉大浴場に集う人々
これまでいくつかの温泉旅館に泊まってきた中で、自分の直感と合わない“あること”がちょっと気になっていた。

わざわざ泊まりに来て旅館内の温泉大浴場に入らない者はいないだろう。中規模宿で数十名・大規模宿で100名以上が、夕方チェックインした後に「メシ前にひとっ風呂浴びてくるか」と大浴場へ向かう姿が想像される。

そのわりには何十名もがひしめく夕方の大浴場に遭遇することってあまりない気がする。こいつは直感の誤りってやつかもしれない。そこで、かなり荒っぽい概算だが大浴場の人口密度を見積もってみた。

話の背景

もちろん時と場合により混雑度に差はある。人気の温泉宿ならいつでも混んでるだろうし、多くの宿が週末やGW・お盆・年末年始ともなれば大浴場が芋洗い状態になって不思議はない。

一方、自分が温泉旅行の日程を組むときは混雑しそうな日を避けるようにしているせいか、混みあう大浴場をあまり見たことがない。客が少ない時に行くんだから当たり前だろ、といえばまあそうなのだが、それにしても直感と比べて浴場内の人数が少なすぎる。

当日の客が自分だけとか数名だけとかならともかく、食事の際に大広間に集められた人数を見ると30は下らないな、という時でも大浴場を独り占めできたり他に1~2名しかいなかったりする。みんな夕方に入浴したいだろうから、みんなが限られた時間帯に殺到してもっと混みあう気がするんだけどな。


大浴場の人口密度を見積もる

荒いのを承知で簡略化する

こいつはきっと直感の誤りに違いない。たとえば学校の1クラス40名の中で複数の生徒の誕生日がカブってしまう確率はどれくらいか?…誕生日は2月29日を入れて366種類あるんだから、そうそうカブることなんてないだろうと直感的には思うのだが、実際に確率を計算してみると「わりと普通にあるよ」ってな結果になるらしい。

同様のことが大浴場の人口密度にもいえるのではないか。精密なモデルを立てたり確率分布を云々するのは自分には荷が重いので、かなり大雑把で荒っぽい簡略化を行ってみる。

  • n名の客が15時~18時の間にチェックインする。
  • チェックイン時刻の分布にピークはなく一様とする。
  • 全員がチェックイン後すみやかに「まずひとっ風呂浴びてくるか」と大浴場へ行く。
  • 客は男女同数で大浴場は男湯・女湯に分かれている。
  • 各自の入浴時間の長さは等しく t(時間)とする。例)30分ならt=0.5。
  • いったん入浴した客は、本記事が関心の対象とする期間内に再び入浴することはない。

期間の最初と終わりがややこしい

3時間のあいだにn名の客がパラパラと(何時何分頃がピークということもなく)一様に男湯・女湯へやって来ては t時間ずつ居座るわけである。

ここで細かいことをいうと、18時以降にチェックインする客はいない前提なので、18時以降は大浴場にやって来る者がいない。だから18時までの大浴場には客の出入りがあるけど18時以降は出ていく客のみになって人口は減る一方だ。

反対に15時からの t時間は大浴場を出ていく客がいない。入ってくる客のみで人口は増える一方だ。

見積りA…フロー均衡時間帯の平均

大浴場の人口が増える一方だとか減る一方の時間帯を考えから外して、客の出入りのフローが“平均的には”均衡する(15+t)時以降から18時以前の状況に絞ろう。
※tは3に比べて十分に小さいとする。

夕方の3時間に男湯・女湯それぞれ(n/2)名ずつが来訪するわけだから、いま男湯に着目すると、1時間あたりの来訪者数は
 (n/2)÷3
となる。

人口が増える一方の時間帯=15時から(15+t)時までに男湯へ来訪する客の総数を  f とすると、fは上の t倍だから
 f = nt/6
となる。

したがって (15+t)時の時点で男湯には f人が存在し、以降は出入りのフローが均衡するため、男湯の人数は fのまま変わらない。

この f が「出入りのフローが均衡する時間帯に大浴場で同時に居合わせる平均人数(自分自身を含む)」だと考えられる。もちろん自分が入浴する t時間のあいだじゅう、ずっと同じ顔ぶれなのではなく、出たり入ったりがありつつ、各瞬間の人数にもデコボコがありつつ平均的には自分を含めて f名が浴室内に居合わせるという意味である。

見積りB…全期間の平均

別の視点による見積りも考えられる。18時ぎりぎりにチェックインした客は18時から(18+t)時まで入浴するから、本記事が関心の対象とする期間は15時~(18+t)時までの(3+t)時間だ。

男湯に着目すると、もし(n/2)名が直列に、すなわちひとりずつ順番に入浴したなら、全員が入浴し終わるまでトータル (nt/2)時間かかってしまう。そこを f名ずつ並列に入らせることによって、ぴったりトータル (3+t)時間に収めることにする。

つまり式で表すと
(nt/2)÷f = 3+t
よって
f = nt/(6+2t)

見積りAとは微妙に違う結果になった。こちらはフローが均衡しない時間帯を含めた(3+t)時間全体の平均だからだ。


結構いい線いってる見積り

では見積りAを採用して具体的な数値を入れてみよう。客30名(男は15名)が30分ずつ入浴する、つまりn=30, t=0.5のときは f=2.5だから自分以外には1~2名ってところ。おお、そんな感じ、そんな感じ。直感だと5名を超えていてもおかしくない気がしてしまうんだけどね。

もっと大規模旅館で、かつ、ぬる湯のため長湯する場合を想定して、n=100, t=1.2のときは f=20。ややオーバー気味の数字かな。でもこれくらいの旅館になると大浴場が複数箇所あったり、浴室内に複数の浴槽を設けていたり、大きな露天風呂が充実していたりするから、20名が適度に分散して混雑を感じないと考えることはできる。

知る人ぞ知る的な小規模旅館に平日泊まる状況は n=5, t=3/4(45分)として f=0.625。ほぼ独占状態まちがいなし。というか浴室が空っぽになる時間が4割近くもある。自分的にはあるあるな感じだ。

ということで、なんとなく納得したからもういいです。誰得な計算をしてしまったが後悔はしていない。

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